ニュース

学生20名が羽田空港でグラハン見学、大学側も航空・観光分野への就職対策に本腰

航空機の運航を支えるグランドハンドリング業務への理解を深めてもらおうと、空港グランドハンドリング協会が学生向け見学会を羽田空港で開催した。3年目の開催となった埼玉学園大学/川口短期大学も同業界への就職をサポートする体制をスタート。現場見学やスタッフとの意見交換を通じ、航空業界を志す学生たちが仕事の魅力や将来像に触れた。

文:多和田新也(編集部) 写真:多和田新也(編集部)
X Facebook LINE

 空港グランドハンドリング協会(空ハン協)は6月25日、羽田空港で学生を対象とした空港見学会を開催した。埼玉学園大学、川口短期大学からの働きかけで、2024年度から始まったものであるが、3年続けての開催となった。

 埼玉学園大学からは1年生2名、2年生1名、3年生8名。川口短期大学からは1年生9名と、両大学を合わせて20名が参加した。

 大学としては航空系の科目もあるという経済・経営系の学科や、短大の観光系学科の学生に対する就職先の新たな選択肢として、空ハン協としては学生がグランドハンドリング分野へ就職を希望することを期待した取り組みだ。

 しかし、大学側も航空業界を含む観光分野への就職対策を本格化。このグラハン見学会を提案した冨吉光則 教授が中心となり、観光ホスピタリティ就職研究会(略称:THC)を発足。観光業を志望する意志を持った学生に対して、関連講座の開催や、就職活動のために必要な指導を提供するなど、学校側が観光分野への就活をサポートする体制を整えた。

 埼玉学園大学/川口短期大学の石井大貴 学長によれば、前年度までのグラハン見学会は学内に広く呼びかけて参加者を募っていたそうだが、今年度はこのTHCのメンバーに案内したという。つまり、観光分野へ就職したいという意志を持った学生が集まったとも言えるだろう。

見学会に参加した学生の皆さん。

 見学会では20名の学生が4グループに分かれ、それぞれJALグランドサービス、ANAエアポートサービス、羽田タートルサービス、Swissport(スイスポートジャパン)の現場へ。この一部行程を取材した。

 ANAエアポートサービスは、オペレーションマネジメントの業務、預け入れ荷物のソーティング、機側での業務を見学するコースとなった。オペレーションマネジメントの見学では、実際に羽田空港のステーションコントロールへ入り、ANAスタッフがどのような業務なのかを詳細に説明。特にロードコントロールの業務について詳しい説明がされていた。

 見学の当日は台風7号と8号が発生するような気象状況で、引き返しやダイバートを想定した燃料の搭載、それに伴う貨物積載量への影響など、まさにその場で起きているリアルなロード管理の現場を見られる機会となっていた。

ANAのオフィスを訪問し、オペレーションマネジメントを見学。
ロードコントロールの業務について、目の前で起きている気象状況に対する対応など具体例を挙げながら説明があった。
学生も熱心にメモを取りながら説明を受けていた。

 JALグランドサービスでもソーティング場や機側での現場を訪問。機側での作業はあいにくの雨のなか、JALロゴの入った雨具を着用しての見学となった。

 見学の対象となったA350が新千歳へ向けて出発する際のお見送りにも参加。客室から手を振り返す乗客の姿が見え、直接の関わりを感じにくいランプでの業務のなかでも、利用者との交流がある現場を体感していた。

JALグランドサービスのランプ業務を見学。バルク荷物を収めるコンテナの説明を受けているところ。
出発時にはコクピットのパイロットも手を振って応えた。

 その後は、JALグランドサービスのスタッフと、同社の現場を見学したグループの学生による意見交換会が行なわれた。学生側からも育児・介護休暇の取得状況や研修期間といった制度面の質問から、やりがいやプライベートの過ごし方、入社前後で感じたギャップなど現場スタッフへの問いかけまで、さまざまな質問が挙がった。

 JALグランドサービス側からも女性が多く活躍する職場であること、休日の過ごし方、仕事で感じた達成感などを回答。さらに話題は、4月に発表したヒューマノイドなどのDX活用にも及び、グラハン業界へ就職した場合の未来の姿を思い浮かべてもらう場にもなった。

学生とJALグランドサービスの意見交換会。現場スタッフの経験や日常を聞く機会となった。

 また、この意見交流会では、空港グランドハンドリング協会 代表理事・副会長の服部 茂氏もあいさつ。「あいにくの雨模様となったが、空港は365日、晴れの日も雨の日もこのようにオペレーションを行なっている。その意味で、普段通りのリアルな現場の一日をご覧いただけたのでは。私たちも毎日仕事をしているが、飛行機の近くで仕事ができることは本当に大きな喜び。毎日違った日々があり、同じ飛行機であっても便の設定や乗られるお客さまが毎回異なる。そうしたさまざまな方が飛行機を使ってそれぞれの目的地へ飛び立っていかれる姿を想像しながら、毎日ワクワクして仕事に取り組んでいる」と現場からの立場でコメント。

 そのうえで、「最も高速で移動できる手段は飛行機。国内だけでなく、海外へもつながっている。私たちの航空産業は、羽田・成田を合わせて、今後も飛行機を飛ばす枠をさらに多く作り、日本の方だけでなく、海外から来られたお客さまにも広くご利用いただきたいと考えている。また、東南アジアから日本を経由して北米に向かわれるお客さまの乗り継ぎなど、首都圏で飛行機を乗り継いでご利用いただくケースも増えている。このように、航空産業は今後もさらに多くのお客さまにご利用いただき、成長していく産業であると考えている」と、航空業界の将来性についても語った。

学生を前にあいさつする空港グランドハンドリング協会 代表理事・副会長 服部 茂氏(写真右)。

 学校側からは石井大貴 学長があいさつ。「小規模な大学だからこそ、こうしたリアルな場を毎年継続して開催してもらえることに大きな意義がある。非常に現場に近い細かな作業や経験を見せてもらったことで、学生たちが働くイメージをより具体的に膨らませることができた。JGSスタッフの職場の雰囲気の良さを学生たちも肌で感じ取って、就職の選択肢に入ってきたと思う」と総括。

 先述のTHCについて紹介したうえで、「大学・短大としても今後さらに力を入れ、グランドハンドリング業界を志す学生をより多く輩出していきたい。若い世代へのアピールや動機付けのため、今後とも継続的な協力と連携をお願いしたい」と、今後も一層の連携強化に期待を寄せて見学会を締めた。

埼玉学園大学/川口短期大学 学長の石井大貴氏。