連載
平面から曲面へ。進化するコクピットの窓「ウインドシールド」~ 連載【月刊エアライン副読本】

【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。
機首は旅客機の顔だ。コクピットの窓が目に相当し、メーカー(家系)ごとに似ているのも人間の顔と同じだ。
正面を向いている窓を「ウインドシールド(イギリス英語ではウインドスクリーン)」といい、横の窓は文字通り「サイドウインドウ」だ。
旅客機のコクピットの窓には視界の広さなどさまざまな決まりがあるが、空気抵抗が小さいことも重要だ。
最近は胴体のラインと段のない曲面窓が多いが、かつては平面窓が一般的だった。とりわけウインドシールドはバードストライクからパイロットを守れる強度が求められており、それを曲面窓で実現するのはむずかしかったからだ。
バードストライク試験では、特殊な大砲で4ポンド(約1.8kg)の鳥を実際にぶつける。衝突の速度を250ノット(463km/h。高度1万フィート以下の制限速度)としても、一流プロ野球投手の球速の約3倍だ。
破損は免れないにしても、貫通せず、破片が飛び散らなければよい。そんな条件を満たすために、強化ガラスやアクリル、衝撃吸収用ビニール、曇り防止の電熱層などを重ねた構造になっているが、これを曲面にするのがむずかしい。
曲面にすることで景色が歪んではならないし、温度差によるストレスもある。夏の地上では50℃以上に焼かれ、巡航高度の外気温は氷点下50℃。機内は23℃程度で、電熱層による加熱もある。熱膨張率が異なる材料を貼り合わせるだけでも大変そうだ。
こうした問題を解決して、最初に曲面ウインドシールドを装備したのはボーイング747だが、「窓1枚で郊外に家が買えるほど」の価格だったという。機体価格は当然として、交換が必要になった場合のコストも高くなる。
そのため747以降も、多くの旅客機は平面窓を採用し続けた。
平面窓でむずかしいのは、円い胴体にどう組み合わせるかだ。窓を小さくして枚数を増やせば曲面に近づけられるが、支柱が多くなって視界がさえぎられる。
ダグラスはDC-8やDC-9のウインドシールドを3分割にしたが、他メーカーの多くは2分割とした。
1990年代のリージョナルジェットからは再び曲面のウインドシールドが使われるようになり、CRJやE-Jetsは片側2枚ずつだったサイドウインドウも1枚にまとめた。
ワイドボディの787も曲面窓を採用したが、窓1枚あたり面積は旅客機としては最大になった。そのためか787のウインドシールドはしばしばヒビ割れに悩まされたが、ライバルのA350は曲面窓ながらも1枚あたりの面積を抑え、信頼性の向上やコスト削減を狙った。
ただし見た目は787の方が近代的で垢抜けているためか、エアバスは窓の周囲を黒くペイントした。これを反射防止とする人もいるが、試験中にエアバス本社で何度も念をおして聞いたところでは単なるデザイン、装飾のためという説明だった。現に黒い部分にも、艶消しではなく光沢のある塗料が使われている。
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