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ANAシアトル支店長が語る羽田=シアトル線のいま。路線動向から旅の過ごし方まで

ANAの羽田=シアトル線が、ビジネス需要にとどまらない実績を上げている。ボーイングとの密接な関係性や、都市と大自然が調和するシアトル本来の魅力とは何か。2022年4月よりシアトル支店長を務める草野 博氏に、路線の現状とおすすめの過ごし方を聞いた。

文:芳岡 淳 写真:芳岡 淳
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全日本空輸株式会社 シアトル支店長の草野 博氏に路線の現状や、おすすめのシアトル旅など現地の魅力を訊いた。

 2012年7月25日にANAの成田=シアトル線が就航してから約14年。成田発着と羽田発着の切り替えを経て、現在は羽田=シアトル線の1日1往復が運航されている、東京とシアトルを結ぶ直行便だ。このシアトル路線の現状や、シアトル旅行のおすすめについて、2022年4月からANA シアトル支店長を務める草野 博氏に話を伺った。

ビジネスや訪⽇観光に向かう⽶国⼈が⽀える路線

 シアトルといえば、AmazonやMicrosoftといった世界有数の企業が拠点を置く、ビジネスが盛んな街だ。それゆえ、ANAが運航する羽田=シアトル線でも、ビジネス旅客が多い。

 シアトル支店長の草野氏は、現在の同路線の搭乗率について「直近の夏、7月あたりはやはり好調で、8割から9割ぐらいのお客様にご利用いただいています」と語る。一方で、乗客全体の5割以上を外国籍の利用者が占めており、昨今の円安や日本旅行の人気を背景に、米各地からユナイテッド航空でシアトルへ飛び、そこから日本へ向かう米国在住の利用者も多い。

 そのインバウンド客の傾向として、子供連れのファミリーや、友達同士で日本旅行に出かける若年層が目立っている。草野氏の近所の人たちにも日本旅行は非常に人気だといい、今や東京、大阪、京都といった定番の観光地だけでなく、日本人でも「そこはどこ?」と思うような場所まで訪れるなど、探究心にあふれたアメリカ人旅行客が増えているとのことだ。

 シアトル線の特徴として草野氏は、「やはり羽田空港に飛んでいる」という点が強みだと語る。

 羽田=シアトル線を運航するのはANAだけではないものの、都心に近いという立地のよさは、東京近郊の乗客や、品川から日本各地に移動する新幹線を利用する乗客にとって大きなメリットになる。

 また、スケジュールも遅めの時間に設定しており、「日本、アメリカともに現地の時間を少しでも長く確保できるスケジュールになっているので、ビジネスのお客さま、特に日本から搭乗するお客さまには使いやすいのではないでしょうか」と話す。

 さらに、日本を経由する第三国の乗り継ぎ需要について、草野氏は「東南アジアのマーケットがものすごく大きい」とし、「私どもはユナイテッド航空さんと組んで、羽田、成田の両方のハブでアメリカと東南アジアの流動を獲得しにいっています」と話す。先述の旅客構成にも関わるが、羽田=シアトル線でも、羽田で乗り継ぐ第三国の利用者が2割から3割を占めるという。

生鮮食料品を中心に貨物輸送にも強み

 羽田=シアトル線は、貨物輸送の面においても好調だ。その中身は意外にも生鮮食料品が中心で、草野氏は「シアトル発ですと、夏のシーズンはさくらんぼで満載です。ワシントンチェリー、アメリカンチェリーという黒っぽいものと、最近ではレーニエチェリーですね。日本のさくらんぼと見た目の印象も同じで、ものすごく美味しいですね」と話す(レーニエチェリーは、マウント・レーニアの名を冠したこの地域生まれの品種)。それも日本だけでなく、日本を経由してアジア各地、もしくはオセアニアまで輸送しているとのことで、夏のシーズンはさくらんぼが貨物輸送を支えている様子だ。

 また、シーズンによって特需も発生する。過去には「以前、クリスマスシーズンに、船便が港湾ストライキの影響を受けたときは、貨物専用機でNintendo Switchを満載していたことがありました」といい、ニンテンドー・オブ・アメリカの本社があるシアトル近郊ならではの出来事もあったようだ。

なんといってもシアトルといえば「ボーイング」

 シアトルは、ボーイングのエバレット工場やレントン工場が所在する、航空業界にとって重要な都市でもある。その関係について伺うと、草野氏は「787はボーイングさんと一緒に作り込んできた」と語る。ここシアトル近郊で生産された787を世界で初めて就航させたのがANAであり、ひときわ特別な関係がうかがえる。

 続けて「単純なビジネスパートナーとしてのつながりを超えて、何かイベントがあれば一緒に参加しています。毎年シアトル近郊で開催されるボーイング・クラシックにも参画させていただき、ANAドリームライナーラウンジというものを運営しています」と、ボーイングと結ばれた強い関係性を語る。ボーイング・クラシックは、米国のシニアツアー「PGA TOURチャンピオンズ」の大会だ。

都会と大自然をともに楽しめるシアトルの街

 日本の旅行者に向けて、シアトルの魅力も草野氏に伺った。「シアトルの街自体は非常にコンパクトで、シアトルらしい海があって、スペースニードルが立っていて、マウント・レーニアが見えている。皆さんが思い描くシアトルらしい雰囲気は、1日、2日もあれば感じていただけると思います」と話す一方で、「シアトルの本当の魅力は市内ではなく郊外にある」と語る。

 「市内から30分出るだけで、日本では感じられないような自然や湖が点在していて、散歩やトレッキングができるトレイルロードがすごく整備されています。郊外に一つ拠点を持って、ゆっくり散策しながら過ごしていただくのもよいのではないかと思います」。実際、この地域に住む人の多くも市内ではなく郊外で過ごしており、それこそが本当のシアトルらしさだという。

 ベストシーズンについては、晴天に恵まれ、過ごしやすい夏をトップシーズンとしつつも、「夏だけじゃなくて、これから秋もすごくきれいです。これは本当に郊外に出ないと分からないですね」と、改めて郊外での過ごし方について熱く語る。

 街中や観光名所を巡る、いわゆる観光ではない。暖炉のある宿でコーヒーを片手に読書をする。でも外は雨。なんとなくゆっくりと時間が流れ、そうして旅を終える。日本ではなかなか経験できないこの過ごし方こそ、草野氏のおすすめだ。

 最後に草野氏は「今は円安で厳しい状況ではありますが、日本から多くの若い人にシアトルを訪れてほしい」と話した。若者にとっても、先述のような、郊外で時間を忘れてゆったりと過ごす経験は、かけがえのないものになるはずだ。

秋のシアトル郊外(写真提供:草野 博氏)

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