特集/本誌より

「ANAのふるさと納税」の“関空グラハンツアー”に密着。運航便の間近で緊張感のある業務を見学!

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案内したスタッフの一人である沖さんが、記念写真をお手伝い。グランドハンドリングスタッフとの交流もこのツアーの醍醐味だ。

携わったスタッフに訊く、グラハンツアーの狙いと見どころ

 いくつかのグランドハンドリング見学ツアーを取材したことのある筆者も、実際の車両操作や運航便の貨物室に乗れるといった内容に、驚くほど充実したものである印象を受けた。そんなツアーの現場で中心を担ったのが、小野紘也さんと沖 飛鳥さん。小野さんはANAグループのなかでも全世界で56人しかいないマスターインストラクターの資格を持つグランドハンドリングスタッフだ。

グランドハンドリングツアーの企画推進や当日の案内を担当した、小野紘也さん(右)と沖 飛鳥さん(左)。

 このツアーの話が上がったとき、小野さんは、「以前も学生の方やお子さま、あるいは株主の方などにグランドハンドリングの仕事を紹介する機会がありました。今回は一般の方向けなので、そのときの経験を活かして、どのようなことをしようか…とプラスの気持ちで取り組みました」という。

 また、沖さんも「対価を支払って来てくださるということは、仕事を見てみたい! と強く思ってらっしゃる方だと思うので、準備から力を入れていかなければいけないという気持ちでした。(ツアーのアテンドの)経験がなかったので不安が半分と、企画から携わって本番まで取り組めるというワクワク感が半分でした」と話す。

 そんなツアーのこだわりを訊くと、沖さんは「動画です。コンセプトから小野さんと考えて、お客さまが見て、面白くてモチベーションが上がる動画を絶対作りたいと思っていました。お客さまがこれからツアーで機側に出る前に、いかにワクワク感を高められるか、を意識してこだわりました。また、最後の(サプライズ)動画も、お客さまのためにとことんやれることをやりたいと思って実現しました」と、動画へのこだわりを語る。そして、小野さんは、「表現の仕方を、より伝えやすいものにする点です。また、せっかく来ていただいているので、飛行機の下を通ったり、貨物室に入ったりと、できるだけ私たちと同じ目線で動けるようなことをしたいと思っていました」と、ツアー内容に対するこだわりを紹介。

 一日を終えて両名は、「参加者の反応を見ながら臨機応変にできたと思います。お客さまの楽しそうな表情をたくさん見られて、我々としてもうれしかったですし、やってよかったと思っています」(小野さん)。「グランドハンドリングの仕事では普段お客さまの顔を見る機会がなかなかありません。今日はずっとお客さまと一緒にいて、楽しそうに目を輝かせていただいているのを見て、本当にやってよかったと思っています。ここまでの準備も力を入れてやってきて、それが形になったことは私としてもよい経験になりました」(沖さん)と、それぞれ充実感のある回答だった。一方で改善点なども浮かんだそうで、次があれば「もっといいものにできると思う」(沖さん)と、将来の再開催に期待したくなる言葉も上がった。

全日本空輸株式会社 人事部 ANA人財大学 変革塾の川村大智さん。

 一方、「ANAのふるさと納税」としてグランドハンドリングツアーを提供する意義や目的について、ANA 人事部 ANA人財大学 変革塾の川村大智さんにも話を訊いた。冒頭でも触れたとおり、ANAグループの社員提案制度「がっつり広場」から生まれたアイディアで、2024年に千葉県成田市の返礼品として成田空港で開催されたのがきっかけだ。「このときのお客さまの反響が非常によく、より多くの空港で見ていただきたいということになり、いくつかの空港に手を挙げていただきました。そのトップバッターとして関西国際空港で開催することになったのです」という背景がある。

 川村さんは元々グランドハンドリングスタッフで、新千歳や神戸、伊丹で従事した経験を持つ。その視点から、「使っている車両や設備、風景など、空港ごとにいろいろな特色があります。一般的なグランドハンドリング見学ではなく、それぞれの空港の魅力を、各空港の方に考えていただいて、それを見ていただくことに意義があると考えています」と訊くと、このツアーの独自性が見えてくる。実際、車両に触れる、広大なランプを歩くといった体験だけでも、各空港それぞれの“味”を感じられる部分だろう。

 さらに、「マスターインストラクターは我々(グランドハンドリングスタッフ)から見るとレジェンドのような存在なので、直接レクチャーを受けられるのは本当に価値があると思います」という本職ならではの魅力の紹介も。

 もちろん、ビジネスとしての意義もある。「グランドハンドリングの人材不足は厳しいものがありますので、参加された方が将来の働き手となるようなことがあればうれしいです。もちろん、ふるさと納税ですので(ANAグループとして)地域への貢献という観点もあります。“空港が根付く地域の魅力”を発信することにつなげたいと思っています」。

 今回の関西国際空港でいえば、これは大阪府泉佐野市の返礼品として提供されている。泉佐野市イコール空港ではないが、関西国際空港という大規模空港の魅力を発信し、その空港がある泉佐野市の存在を全国にアピールすることになれば、それは自治体にとって大きな意義があるだろう。また、今回のイベントは大人数なものではないものの、この日の参加者には東京や宮崎のように遠方からの来訪者もおり、誘客効果は少なからず期待できそうである。

 さて、地域や空港の特色を打ち出すようなイベントは、今後も開かれるのだろうか。「今年度は佐賀空港、中部国際空港で同様のグランドハンドリングツアーがあり、2月に行なわれる佐賀空港のツアーではVRのグランドハンドリング訓練の体験ができます。社内提案制度で検討しているなかにも、来年度以降に、ふるさと納税のスキームで世に出せそうなアイディアが色々と出ています」とのことで、ぜひ飛行機ファンが驚くような新たな返礼品の登場にも期待したいところだ。