連載
高高度を飛ぶ旅客機の機内を快適にする“与圧”~ 連載【月刊エアライン副読本】

【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。
空気は上空にいくほど薄くなる。登山でも富士山頂(標高3,776m)まで行くと苦しいし、ジェット旅客機が巡航する高度1万m以上ではほとんどの人は生きられない。
だから旅客機は胴体を気密構造にして、圧力をかけている。これを与圧といい、高高度を飛ぶ旅客機でも機内は標高2,400m程度の気圧(約0.8気圧)に保たれている。
2,400mというのは富士山五合目くらいの高さで、地上(標高ゼロ)と比べれば空気は薄いが、観光バスでも普通に行ける場所だ。多少はエンジンのパワーが落ちたり、具合が悪くなる人もいるかもしれないが、まずまず大丈夫という程度の気圧である。
地上と同じ1気圧にできればベストだが、それでは構造にかかる力が大きくなりすぎて重くなる。機内を0.8気圧に保つだけでも、1m四方に約6トンもの力がかかってしまうから、「このくらいでガマンしてもらおう」という妥協点だ。
与圧用の空気は、基本的にはエンジンから抽出している。燃やす前の空気なので新鮮な外気と変わらないが、出口も設けなければ機内の空気がよどんでしまう。
そのため旅客機の胴体にはアウトフローバルブという出口が設けられて空気の流れを作っている。
アウトフローバルブを大きく開けすぎると空気が抜けすぎて機内の圧力が保てないし、小さすぎると圧力が高くなりすぎて胴体が壊れてしまう。その理屈を利用して、アウトフローバルブを調節して機内の圧力を適正に保つようにしている。
蛇足ながら不時着水しなくてはならないときには、パイロットは着水前にアウトフローバルブを閉じる。開いたままだと、ここから水がどんどん進入して飛行機が早く沈んでしまうからだ。
与圧システムのない飛行機、たとえばDHC-6ツインオッターやDo 228でも性能的には25,000フィート(約7,600m)まで上昇できるが、通常は5,000~6,000フィート程度、最大でも12,500フィート以下で飛んでいる。これ以上の高度だと、全員分の酸素マスクを装備しなければならないというルールがあるからだ。
ちなみにスカイダイビングの跳び出し(イグジット)高度が通常は12,500フィートなのも、このルールと関係がある。高くから降下すればそれだけ長い時間フリーフォールを楽しめるが、それよりは酸素マスクなしで上昇できるぎりぎりの高度から跳び下りる方が手軽だからだ。
そういえば富士山頂の3,776メートルという高さは、約12,400フィートである。「ぎりぎり酸素マスクを装備しなくてもいい高さだな」というのが、航空マニアの正しいリアクションかもしれない。
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