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第6回 500系新幹線は、不運な新幹線なのだろうか? ~ AIRLINE×新幹線EX 特別企画

新幹線車両として絶大な人気を誇る500系。6編成体制で山陽新幹線の「こだま」で使用されるが、いよいよN700系での置き換えが進められることとになる。この500系、よく「不運の新幹線」といわれるが本当にそうなのだろうか。

文:新幹線EX編集部 写真:新幹線EX編集部
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新幹線EX71
2024年4月19日発売の「新幹線EX71」。本誌ならではの取材力で、500系新幹線を深堀する。

N700系の短編成化で置き換え

 2024年2月14日に、JR西日本から発表された情報によると、500系新幹線4本の置き換えのために、N700系K編成4本が8両編成に改造されることになった。改造は2026年度末にかけて行われる予定で、500系4編成が2026年度末までに用途廃止となる。2編成はその後も残る見込みだが、乗ったり撮影したりする機会は大幅に減ることだろう。
 なお、N700系の短編成化の詳細は発表になっていないものの、これまでの700系E編成や500系V編成同様、普通車指定席は2+2列になる。グリーン車のフットレスト撤去・絨毯撤去などで2+2列化することになるだろう。
 また、N700系は先頭T車のため、6M2Tとなるのであろうか。最高速度こそ285㎞/hになるであろうから問題なさそうだが、今のN700系の加速度である2.2㎞/h/sの維持は難しそうだ。もっとも、500系の加速度は2.2km/h/sもないので、加速度が多少落ちたとしてもダイヤ上の支障はなさそうである。

500系は不運な新幹線?

 いうまでもなく500系新幹線は、山陽新幹線の300㎞/h運転を実現させた車両だ。300㎞/h出せる新幹線は、500系が営業運転を開始した1997年から2007年まで、東海道・山陽新幹線では唯一無二の形式だった。新造された編成数もわずかに9編成だったので、16両時代は定期列車では「のぞみ」以外使われていなかったことが特筆される。16両編成の500系が「のぞみ」から撤退したのは2009年3月のこと。実に10年以上にわたり、「のぞみ」以外で運用されなかった稀有な形式である。
 東海道新幹線を走る新幹線は13~16年ほどで引退していく。それを考えるとフラッグシップの座を維持し続けていた500系は、むしろ幸運な車両ともいえるのではなかろうか。
 そして、8両編成になってからも、絶大な人気を維持しながら、20年近く活躍することとなる。最高速度は285㎞/hに抑えられ、「300㎞/h走行」という輝かしいタイトルはなくなってしまったが、その一方で、いまや山陽新幹線では300㎞/h運転が当たり前になっている。その「当たり前」を作り上げたのは、500系であることは疑いようがなかろう。
 さらにいえば、今のように「のぞみ」「みずほ」「さくら」が300㎞/h走行できているのも、500系「こだま」のおかげ、ともいえよう。500系が「のぞみ」で活躍していた時代は、山陽新幹線内の「こだま」は、0系や100系で、最高速度は220㎞/hであった。これでは今のように300㎞/h運転をする列車を頻発させることはできない。8両編成化された500系は、0系や100系を置き換えていき、700系E編成とともに、山陽区間の「こだま」の高速化という新たな役割を与えられた。つまり、500系「こだま」のおかげで、いまの山陽新幹線の高頻度・高速運転が可能になっているのである。


 多くの人から愛されてきた500系新幹線。今の時点では2026年度までに2編成を残して廃車されることしか発表されておらず、最終的な引退の日はわからない。ただ、車齢を考えても、全廃の日はそう遠くないものと思われる。
 さて、2024年4月19日発売の「新幹線EX71」では、この500系新幹線を大特集。500系開発に携わった、JR西日本・日立製作所のOBインタビューのほか、500系新幹線が山陽新幹線の高速化に、どう貢献したのかを紐解いていく。

新幹線車両として絶大な人気を誇る500系。6編成体制で山陽新幹線の「こだま」で使用されるが、いよいよN700系での置き換えが進められることとになる。この500系、よく「不運の新幹線」といわれるが本当にそうなのだろうか。

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