連載
ジェットエンジンは離れていても吸い込まれる危険がある ~ 連載【月刊エアライン副読本】
【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。
ジェットエンジンは前方から吸い込んだ空気を圧縮し、燃料と混ぜて燃やし、後方から噴き出す。その勢いと熱さは、「後ろに立っていたら危ない」と容易に想像できるものだ。
しかしエンジン前方についてはどうだろう。鋭利なファンが高速で回っているから触れたら大変なことはわかる。しかし、「離れていても吸い込まれる危険がある」とまでは想像しにくいのではないか。

もちろん、乗客は運転中のエンジンに近づくことはないから心配することはない。しかし航空整備士やグランドハンドリングスタッフのように地上で作業をするときには注意が必要だ。そうした人たちは十分な安全教育を受けているが、さらにエンジンにも警告マークが描かれている。

たとえば737NGの場合、警告マークには空気取入口の中心から半径4.2mの範囲は危険と書かれている。これは普通の人が想像するよりもかなり広いのではないか。しかも正面だけでなく、側面でも危険だというのだ。

実は雨や雪の日には、こうした空気の流れが目に見えることがある。地上の水や雪がエンジンに吸い込まれていくのだ。ここで掲載した画像でも、空気取入口よりも後ろにある雪までが吸い込まれているのがわかるだろう。

また、同じく猛烈な勢いで空気を吸い込んでいるのが787の与圧空調用の空気取入口だ。多くの旅客機はエンジンで圧縮された空気の一部を与圧空調に使用しているが、787は胴体の空気取入口から吸い込んだ空気をコンプレッサーで圧縮し、さらに熱交換機で温度を調整してからキャビンに送っている。
キャビン用、熱交換機用ともに空気取入口は小さなものだが、吸い込む力は強い。そのためキャビン用空気取入口の前には異物(FOD=Foreign Object Debris)を吸い込まないよう格納式デフレクターがつけられているが、熱交換機の空気取入口にはない。地面からの距離があるから不要なのだろうか。

だが羽田空港にあるホテル「ヴィラフォンテーヌグランド」に2部屋あるANAコラボルームには、いずれも熱交換機内部のファンがオブジェとして飾られている。新品をオブジェとして使うことはないが、吸い込んだ異物のためかブレードが欠けることがあるのだという。やはり吸い込む力は相当に強いということだろう。


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