連載
飛行機は航空機の1種~ 連載【月刊エアライン副読本】
【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。
空を飛ぶさまざまな乗り物を総称して航空機という。ただし日本の航空法では、航空機を「人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機及び飛行船その他政令で定める航空の用に供することができる機器」と限定している。
飛行機は固定された翼とエンジンを持つもので、固定翼機とも呼ばれる。旅客機も飛行機に分類される。つまり旅客機のことを飛行機といっても、航空機といっても、どちらも間違いではないわけだ。
固定されていない翼というのは、ヘリコプターのローター(回転翼)のことだ。だからヘリコプターのことを回転翼機とも呼ぶ。ちなみに映画トップガンに登場したF-14トムキャット戦闘機の翼は動く(後退角を変えられる)が、これも分類としては固定翼機である。同じく固定翼ながらエンジンがないものはグライダー(滑空機)や、ヘリウムのように軽い気体の浮力で飛びエンジンがあれば飛行船だ。
ところがハンググライダーやパラグライダー、気球などは法的には航空機にならない。工学的には立派な航空機なのだが、法的には風に舞う“なんらかの物体”(極論すれば、風で飛ばされているビニール袋だって同じ)という扱いだ。
愛好家はがっかりしそうだが、そんな軽い扱いもわるいことばかりではない。法的に航空機ということになってしまうと、作るにも飛ばすにも厳しい条件が課されてしまうからだ。その大変さは、三菱スペースジェットの挫折やパイロットになるための訓練期間、金額などからも想像がつくだろう。しかし“なんらかの物体”に乗って飛ぶのに国家資格は必要ない。
もちろん、それで事故が多発するようでは社会的には受け入れられないため、こうした「法的には航空機ではない航空機」については、愛好家や業界による自主ルールが定められている。
航空機の中でも特別な扱いをされているのが超軽量動力機だ。これはマイクロライトプレーンあるいはウルトラライトプレーンとも呼ばれ、もとはハンググライダーにエンジンをつけた機体が多かった。
そのためか耐空証明や免許なしで無秩序に飛ぶ人が多く、社会問題化した。そこで航空局は超軽量動力機も航空機であると明確にする一方で、機体性能や用途を制限して従来の航空機よりもゆるやかな条件で飛べる制度を作った。
また今後、新たな枠組みが作られそうなのは無人航空機だ。無人なので「人が乗って航空の用に供することができる」という定義は満たさないが、すでに軍用分野では有人航空機と同様に使われるようになっている。軍用機には民間機のルールは適用されないが、今後は民間分野でも無人航空機の活用が増えることだろう。そのための新たなルール作りが進められているのである。
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