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羽田空港で国産SAF供給記念イベント。SAF普及に積極策を打つ小池百合子 都知事も臨席
コスモ石油堺製油所で製造がスタートしている国産SAF。その使用をスタートしている羽田空港で、小池百合子 東京都知事や製造者、エアライン関係者が集まって記念イベントを開催した。

7月7日、羽田空港での国産SAF供給開始を記念したイベントが、羽田空港第3ターミナル 江戸舞台で開催された。
国産SAFについては2025年4月、コスモ石油、日揮ホールディングス(日揮HD)、レボインターナショナルの3社により設立されたSAFFAIRE SKY ENERGYが、大阪府堺市のコスモ石油堺製油所で製造を開始。5月からこのSAFを羽田空港の貯油タンクに供給している。

イベントに先立って、その日揮HDの西村勇毅氏が国産SAFの概況を説明。同氏はSAFFAIRE SKY ENERGYの最高執行責任者や、廃食用油を原料とした国産SAFで飛行機が空を飛ぶ世界の実現を目指す「Fry to Fly Project」の代表も務めている。
西村氏はFly to Fry Projectが2023年に発足して以後、現在は231の企業・自治体・団体が参画しており、それぞれが主体となって独自の取り組みを展開していることを紹介。現在は廃食用油を原料とするSAFの製造がスタートしているが、これは84%という高い二酸化炭素排出削減効果が見込めるという利点で注目を集める存在であることを説明した。
今後、SAFの需要が飛躍的に伸びていくなか、日本でも2030年にはジェット燃料供給量の10%をSAFに置き換えようという目標が設定されている。そのなかで、SAFを提供できること自体が、その空港、そして空港を抱える自治体にとっての強みになっていくとした。

イベントではまず、小池百合子 東京都知事が登壇。東京都では廃食油回収の促進活動や、羽田空港でSAFを供給する企業に対して、SAFと通常のジェット燃料との価格差分を補助する、いわゆる“値差支援”(1リットルあたり100円の補助)を実施している。
こうした取り組みついて小池都知事は「飛んでいる飛行機を見て“うちの天ぷらの油で飛んでるな”と思うだけでも、非常に密接に感じられるのではないかと思う。環境に配慮して資源を無駄にしないという取り組みは、長い江戸の文化、社会構造と言ってもいいかもしれない。循環型社会がいかにサステナブルなものであり、それが歴史的なものであるか。(イベントが実施されている江戸舞台を指して)まさに江戸の舞台でよい循環ができていたということはとても誇らしくも思うところ」と、循環型社会の取り組みは東京・江戸の伝統であることをアピール。
今年2025年は東京都で世界陸上大会も開催されるが、大会に出場するやり投げの北口榛花選手を起用した回収促進キャンペーンも展開しているほか、「国産SAFの事業者への支援を全国で初めて、ここ羽田空港で実施している。この取り組みを参考にして国の導入促進策の議論も始まったと聞いている。貴重な資源である油を回収し、それがSAFの製造につながり、飛行機へ供給されて、多くのお客さまを空の旅へお運びするということ。脱炭素化のうねりをますます大きなものにしていきたい」と、廃食油回収や導入促進策への協力を求めた。

続いて、日揮HD 代表取締役会長 兼 社長CEOの佐藤雅之氏が登壇し、まず国産SAFの実用化が実現したことについて関係各所に謝意を示し、とりわけ供給事業者に対する支援に対して「このような制度は国産SAFの供給を継続していくうえで極めて重要」と感謝を表した。
同社がスタートさせたFry to Fly Projectについても触れ、「国産SAF拡大の鍵は、脱炭素化社会を実現していこうという社会全体の合意形成だと考えている。(プロジェクトにおいて)多くの皆さまに共感いただき、それぞれ独自のFry to Fly活動を展開されており、大きなうねりを感じている。誰かがやるのではなく、自らやるという人々の行動変容こそが、脱炭素化社会の実現に向けて最も重要であり、本質である」と呼びかけた。

次にANA代表取締役社長の井上慎一氏が登壇。「航空業界にとって2050年のカーボンニュートラル実現は大きな課題」とし、羽田空港でのSAF供給が実現したことに「大きな一歩を踏み出すことができたと確信している」との喜びをコメント。
そして、「今日は七夕。1年に一度、織姫と彦星が出会うロマンチックな空に思いを馳せる日。七夕の夜空に子供たちが未来への願いを託すように、2050年のカーボンニュートラル実現は、いまや人類全体の願い。資源を大量に消費する航空業界は、その願いを実現するための重大な責務を次世代に対して負っている。その自覚を持って、国内外において脱炭素の取り組みを一層力強く進めていく」との決意を述べた。

最後にJAL取締役会長の赤坂祐二氏が壇上に立ち、まずは「2023年にFry to Fly Projectに参加してからわずか2年で、本当に(SAF)で飛行機が飛ぶという夢のようなことが実現した」と、日揮HDを始めとする国産SAF製造に尽力した関係者に感謝。
そして、2021年にANAの当時の代表取締役社長であった平子裕志氏との雑談のなかで、まだ“SAF”という言葉すらあまり知られていないなかで、国産SAFの必要性や意義などを語り合い、共同レポートを提出することになったエピソードを紹介。「それから4年で本当に国産SAFの製造を実現した。日本のSAFは一般の市民の皆さんに協力していただいて出来上がっている。これは諸外国にはあまり例がなく、日本人の意識の高さだと同じ国民として誇らしく思う」と話した。
また最後に、世界陸上大会を機とした回収キャンペーンを東京都が実施することに関連し、JALグループから3名のアスリート社員が出場することを紹介。「3名とも絶好調なので、ぜひご期待いただきたい」と、仲間のアピールを忘れなかった。

ちなみにこの日、ANAの台北・松山行きNH853便に国産SAFが混合された燃料を給油。出発を待つ機体の前で、羽田空港での国産SAF供給を記念した横断幕を掲げての記念撮影も実施された。


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