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NCA、OpenAirlinesのAI導入で運航効率向上図る。747運航他社のノウハウも利用
環境対策が求められる昨今。日本貨物航空(NCA)はOpenAirlinesが提供するAIを活用したエコ・フライングソリューション「SkyBreathe」の導入で燃費、二酸化炭素排出、コスト削減を図る。ボーイング747を運航する他社とのコミュニティがメリットに挙げられた、このソリューション。より燃費がよくなる方法をパイロットにアドバイスするなどの機能を持つという。

NCA(日本貨物航空)は5月13日、燃料コストと二酸化炭素排出量削減を目的に、仏OpenAirlinesが開発したエコ・フライングソリューション「SkyBreathe」の導入を決定したことを発表した。発表に先立って調印式を開き、NCA代表取締役社長兼CEOの本間啓之氏、OpenAirlines Senior Vice President, Strategic Parnershipsのステファン・ニッテンベルク(Stephane Nitenberg)氏が列席した。
本間CEOは、「商業運航開始から40周年を迎えるなかで、OpenAirlines社が提供する運航効率の向上と環境配慮を支援するプラットフォームであるSkyBreathを導入できることは大きな意味を持つ。運航データの活用をさらに進め、燃料消費効率の向上を計画していく。こうした取り組みは、ESG経営を推進するうえでも重要な位置付けになると考えている」とあいさつ。 ニッテンベルクSVPは、同社が拠点を置くトゥールーズが航空産業の中心地であり、フランスを“スタートアップ国家”であると述べたうえで、「それを体現しているOpenAirlines。約15年前、航空業界におけるビッグデータの持続可能性向上への貢献を評価するために設立された。欧州のクイーンスカイプロジェクトの参画を、当時わずか3名の私どもが勝ち取ることができた。そして約10年前に、ビッグデータと人工知能を基盤とした初のエコ・フライングソリューション、SkyBreatheを他社に先駆けて販売した」と同社の沿革を紹介。

「航空会社にとって最大のコストである燃料費と二酸化炭素排出量の約5%削減が可能となる。SkyBreatheを採用した航空会社は昨年、約5億7,000万kgの燃料を節約し、そして二酸化炭素排出量を18万kg削減した。すでに約40か国、約75社の航空会社に導入されている。今日、日本貨物航空の信頼を得て日本に初進出を果たしたことを光栄に思う」と、ソリューションの強みをアピールするとともに、NCAのパートナーシップに喜びを示した。
また、調印式には、フィリップ・セトン駐日フランス大使も臨席し、「OpenAirlines社が日本という新しい国に進出できることを大変うれしく思っているし、同社がフランスにおけるイノベーションシステムの強みを示していると考えている。そして、将来の課題へよりよい対応をするために、フランスのイノベーションを選択いただき、OpenAirlinesのツールを日本で初めて採用、活用していかれる日本貨物航空に祝意を表したい」とあいさつした。
また、同ソリューションに対して、「SkyBreatheのグローバルなユーザーコミュニティに参加できることも大変心強く思っている。すでにボーイング747-8Fを運航する7つの航空会社が参加されており、それらの航空会社とも知見の共有を進めていく。お互いに学び合い、将来的には貨物航空会社の視点がより多く加わることを期待している」と希望を述べた。


パイロットの考えや操縦を平準化して燃費改善を図る
OpenAirlinesのSkyBreatheは、航空機の飛行データや、運航のプラン、フライトのスケジュールなど、さまざまなデータを取得し、AIで分析。どのような改善策をとって、どれだけ燃料消費を節減できるかを可視化できるソリューションだ。AIはSkyBreatheを導入している航空会社のデータなどで学習をしていることから、先述のように7社の747-8F運航会社が参画していることには大きな意味がある。また、そうしたユーザーコミュニティ間でのデータやノウハウの共有なども行なわれることから、自社内だけでは難しい気付きなどが生まれることもあるだろう。
また、今回NCAではSkyBreatheを構成するアプリの一つである「SkyBreathe MyFuelCoach」を導入する。これは、上記のような分析から推奨する事柄を導き出し、パイロットにアドバイスを送るものだ。
運航にあたってはフライトプランの段階で使用燃料などが細かく決まるが、その先のパイロットに依るところが大きいという。会見でニッテンベルクSVPが例に挙げたのは、エクストラ・フューエル、つまり何らかの事態に備えて安全のために積載する追加燃料だ。SkyBreatheを利用すれば、各フライトにおいてどれだけの燃料が残っていたかが正確に把握できるので、より適切な量も見えてくる。
NCAでは、本ソリューションの導入により、年間で約3,800トンのCO2削減、約1,300トンの消費燃料減、約1億5,000万円のコスト削減を見込むが、この削減量のほとんどはパイロットに係わる部分であるという。
SkyBreatheでは多岐にわたる項目について燃費改善の検証を行なえるが、NCAは今回、重心の最適化、追加燃料の最適化、着陸後の地上走行時のエンジンカットのタイミング、上昇推力時間の短縮、着陸後のアイドルリバースの最適化、着陸時のフラップ使用時間の短縮、計画と実際の重量の差異の解消、の7点についてSkyBreatheならびにMyFuelCoachの活用を始めるという
パイロットに係わる内容はいずれも個人差とも言えそうな部分であるが、SkyBreatheは、他社のデータも活かされた具体的な数字(節減できる燃料量)とともに、具体的な方法が示されるのが大きな特徴。もちろん安全運航が前提にはなるとしつつも、SkyBreatheが示した提案を活用して、パイロットの考えや操縦の点での水準の向上と、その平準化を図っていく。

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