特集/本誌より

ANAのボーイング 737-8が生まれる、ボーイング・レントン工場で見た2・3号機の製造現場

ANAが国内線の新たな主力機として導入するボーイング737-8。2026年度中の就航に向け、製造はどこまで進んでいるのか。737シリーズの聖地・米ワシントン州レントン工場を取材した。

文:芳岡 淳 写真:芳岡 淳
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レントン工場で製造されるANAに納入予定のボーイング737-8。

 ANAが次期国内線の主力ナローボディ機として選定した737-8。2026年度中の就航を予定していることから、いつ初号機がデリバリーされるのか、気になる方も少なくないだろう。

 今回は、737 MAXシリーズを生産する米ワシントン州に位置するレントン工場を取材し、デリバリーが迫るANAの737-8や、ボーイングが掲げる安全、品質管理の最新状況に密着した。

737シリーズの聖地「レントン工場」

米ワシントン州に位置するレントン工場。工場の扉に大きく737 MAXが描かれている。

 現在、ボーイングの米国内製造拠点は、ワシントン州エバレット工場、サウスカロライナ州チャールストン工場、そして今回取材したワシントン州レントン工場の3か所だ。

 レントン工場は、1941年に開設され、当初は軍用機としてB-29を中心に製造が行なわれていた。その後は、ボーイング707シリーズ、737シリーズ、757シリーズを製造する工場となり、現在は737 MAXシリーズと、737をベースとした軍用機P-8ポセイドンのみが製造されている。1967年にロールアウトされた737-200の後期型(1970年以降)から、50年以上にわたって737シリーズがレントン工場で製造されてきた。737にとっては聖地と呼べる場所だ。

 737 MAXシリーズの生産は急ピッチで進められており、月産46機ペースという驚異的なスピードだ。さらに今年7月からはエバレット工場にも生産ラインを拡大し、将来的には月産60機まで生産ペースを引き上げる意向も示している。

ANAは最大42機の737-8を737-800の後継機として発注

ANAウイングスが運航し、現在の国内線の主力機材となっている737-800。この機体を置き換える形で737-8が導入される。

 ANAと737シリーズの結びつきは非常に強い。

 1969年に737-200の初号機を導入して以来、737-200を23機、737-400を2機、737-500を25機、737-700を16機、737-700ERを2機、737-800を40機導入してきたANAは、メガオペレーターと言えるだろう。

 そして2019年1月に、737-800の後継機として737-8を最大30機発注した(2022年7月に正式発注、2025年6月にオプションだった10機の確定を含む最大22機追加発注)。これにより、ANAと737シリーズの歴史はさらに続くことになる。

初号機はすでにテストフライトのフェーズに、2号機、3号機の製造が進む

製造工程が終了し、屋外で検査や試験が行なわれている2号機(JA031A)。
機体に付けられているN4022Tは737-8向けの仮の登録記号で、ボーイングで製造される多くの機体で使用されている。

 今回取材したのは9月中旬。

 この時点で、初号機であるJA030Aは、すでに製造の全工程と塗装作業を終え、レントン工場からの初飛行を経てボーイングフィールドへ移動済み。

 レントン工場にいたのは、製造工程を終えて塗装作業を控え、屋外に駐機している2号機JA031Aと、製造工程の初期段階にある3号機JA032Aだった。

 ボーイング737 MAXの製造工程は10日間かけて行なわれ、Flow Day1からDay10までのフェーズに分けられている。

Flow Day1からDay3までの作業が行なわれる上層階のエリア。まだ主翼などが取り付けられる前のため、胴体同士が密着した状態で作業が進められる。

 このうちFlow Day1からDay3までは、主翼が取り付けられていない状態のため上層階が作業場となっており、胴体部分への断熱材、油圧系統、電気配線のほか、Wi-Fiアンテナやレドームの取り付けが行なわれる。

 Flow Day4は、主翼や水平尾翼、垂直尾翼、ランディングギアが取り付けられ、飛行機らしい形が整うフェーズだ。

Flow Day4以降は主翼や水平尾翼などが取り付けられ、飛行機らしい姿になった機体は、下層階に移動して広々としたスペースで製造作業が進められる。

 以降はFlowごとに機体がスライドしていく製造ラインとなっており、機内の細かい部分を中心にパーツが取り付けられ、電源を投入しての各部位の動作確認も同時に行なわれる。

製造過程を見届ける領収検査員

ANA領収検査員の桐澤直矢氏。自身も大の飛行機好きとのことで、これから導入される737-8への期待も熱く語ってくれた。

 製造過程では、ボーイング側のチェックに加えて航空会社側からも領収検査員を派遣し、両サイドから確認を徹底しているのが印象的であった。

 ANAによれば、ボーイング側の品質保証体制下で製造された機体がANAの要求品質基準に適合しているかを、実際の製造現場に逐一立ち会って確認することで、安全管理の徹底と製造品質の向上に貢献しているという。

ミラーとライトを使って2号機JA031Aの細部を検査するANA 桐澤氏。
3号機に取り付けられたコクピットのスロットル部分を検査。
検査は機体全体に及び、カバーで覆われる前の段階も含めて、製造工程のすべてを見届ける必要がある。

 ANAの領収検査員は、10月1日時点で319名が在籍し、そのうち新造機を担当するのは10〜15名程度。派遣された検査員は、基本的にはミラーとライトを手に、アルミ構造の小さな傷や無数にあるリベットの取り付け方などを、目視で一つひとつ確認していく。

 特に製造初日は時間を要し、作業員4人がかりで丸一日かけて作業を行なうなど、ANAとボーイングがいかに協力して品質向上に努めているかが感じられた。

安全管理や作業効率の改善を目指すボーイング独自の「カイゼンプログラム」「セーフティ道場」

 ANAとボーイングが連携した安全管理にとどまらず、ボーイング独自のプロジェクトも盛んに行なわれている。

工場内に掲げられた「Kaizen Recognition Board」には、これまでにカイゼンプログラムで採用された施策が並ぶ。

 実際に工場で働く誰もが、作業時に感じた課題やその改善策を提言できる「カイゼンプログラム」が用意されている。作業で感じたことを「カイゼンカード」に記入すると、継続的改善および訓練を受けた「カイゼン・テクニシャン」がその内容を評価する仕組みだ。

 採用された例は工場内の「Kaizen Recognition Board」に大きく掲示されているほか、月間・四半期・年間ごとに表彰する制度を設けることで、従業員の士気を高めている。

セーフティ道場を通じて生み出されるメリットや改善、ツールを紹介するアンドリュー・エドワーズ氏。

 また、作業時に使用する用具の安全性向上や効率改善を目的とした施設として「セーフティ道場」がある。セーフティ道場では、作業に必要な新規ツールの開発や、作業における安全情報の教育・共有が行なわれている。

 ヘルス・セーフティ・スペシャリストのアンドリュー・エドワーズ氏は、この道場から生み出されたツールの数々を使って実演してくれた。セーフティ道場は2016年にエバレット工場で初めて設けられた施設で、レントン工場には2023年に開設された。現在までに8か所に設けられている。

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