特集/本誌より

キャセイ待望の新ビジネスクラス、「アリア・スイート」に乗った!

2024年10月にデビューしたばかりの、キャセイパシフィック航空待望の「アリア・スイート」。ファーストクラスにも肉薄する快適性が自慢のこの新ビジネスクラスに、さっそく搭乗する機会を得た。なんとも贅沢な空間に身を委ねてあっという間に過ぎ去った成田から香港へ、4時間半のインプレッションをお届けする。

文:中西克吉 写真:中西克吉(特記以外)
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Photo:Murata Takayuki
個室内はゆったりしている。アームレストを下げるとベッドとして使える空間がいっそう拡大し、ドアを閉めると空飛ぶベッドルームに。成田から香港までの飛行時間は瞬く間に過ぎ去る。
Photo:Murata Takayuki

慣熟飛行で投入された成田線で、新キャビン機777-300ERの快適性をチェック!

 キャセイパシフィック航空が2024年10月から順次運航を始めたボーイング777-300ER新仕様機。ビジネスクラス、プレミアム・エコノミー、エコノミークラスの3クラスすべてに最新のプロダクトが導入された。新仕様機ではファーストクラスの設定はないが、新ビジネスクラス「アリア・スイート」は業界の一般的なファーストクラスにも匹敵する高いプライバシー性と快適性を備えている。

 777-300ER新仕様機は長距離路線に順次導入されることになっているが、その前に慣熟飛行と新シートのお披露目を兼ねて期間限定で成田=香港線のCX521/520便に使用された。12月にこの新仕様機のビジネスクラスとプレミアムエコノミーを体験取材した。

 成田空港第2ターミナルのキャセイパシフィック・ラウンジでくつろいだ後、香港行きのCX521便に搭乗した。機内へと足を踏み入れるとL1ドアの正面の壁面にある、バックライトで照らされた同社のロゴマーク「ブラッシュウイング」が新キャビンへと迎え入れてくれる。

 ビジネスクラスは前方の2つの客室に全45席を設置する。座席配列は1-2-1の横4席で、通路を背にしてやや斜め前を向くリバースヘリンボーン型であるのは、在来型の777-300ERと同じだが、「アリア・スイート」はドア付きの個室型シートであるところが決定的に違う。

 キャセイが著名なデザイン会社のJPAデザインと共同で開発した客室は、モダンで洗練された内装に加えて、ムード照明がくつろげる雰囲気を醸し出していて、自宅に帰ってきたような安らぎを覚えた。

背が高めのコクーン状のコンパートメントに囲まれたシートは、ドアを開けた状態でもプライベートな感覚が十分に保てる。中央列の座席の間のパーティションは可動式で、個室にすることも、隣席とスペースを共有することも可能だ。サイドテーブルの上には、スマートフォンなどのデバイスを置くだけで充電できるワイヤレス高速充電ポートを装備。USB-Aポート、USB-Cポート、AC電源も配した。

広々した個室内、足元にも余裕。ドアを閉めなくても高いプライバシー性を誇る

 個室内は十分にゆったりしていた。就航前に新シートのプロモーションビデオを見たときは、室内がやや狭そうな印象も受けたのだが、実際に搭乗してみるとそれは全くの思い違いだった。シートに座った瞬間、空間の広がりを感じた。777は787やA350よりも客室の幅が広いため、同じ1-2-1の横4席でも個室の空間にゆとりがあるのだろう。実際、可動式のアームレストを下げるとシート幅は70㎝以上になるし、全長はベッドにすると2mはある(各実測値)。足元も余裕があり、横になってもストレスなく快適に過ごせる。

 プライバシー性は各社の個室型シートと比較しても高いと感じた。座席を囲むコンパートメントはコクーン状のデザインで、かつ高さが約125㎝(実測値)あるため、扉を開けた状態でもまわりの乗客の姿がまったく目に入らず、ほどよい開放感とプライベート感が両立されている。

 もちろんドアを閉めると没入感はさらに増し、パソコンなどを使う作業にも映画やビデオの鑑賞にもより集中できるというわけだ。そして眠るときにもこのイマーシブな空間が快眠へと誘ってくれるのである。コンパートメントの内側には柔らかなスウェード素材、シートカバーには天然ウールを使って快適性を高めていることにも、同社の細やかなこだわりを感じた。

個人用モニターはクラス最大級の24インチで4K対応。シートの操作や照明の調整、各化粧室の空き状況の確認などもこのモニターから行なえる。

個人モニターからシートや照明も操作。3つの化粧室の空き状況も画面に表示

 個人用モニターはビジネスクラス最大級の24インチで、超高精細の4K対応。用意されるプログラムは最新のハリウッド映画や邦画をはじめジャンルが多彩で、その数も非常に豊富だ。選ぶのに迷いそうなら、事前に同社のウェブサイトにある最新作のリストをチェックしておくといいだろう。

 映画やビデオ、音楽などの視聴に加えて、個人用モニターはシートや照明の操作を行なうコントローラーとしても機能する。あらかじめセットされたシートポジションは、映画鑑賞、リラックス、食事、仕事、睡眠(フルフラット)などがあり、画面のアイコンをタッチすると、それぞれのモードにスムーズに転換。さらにサイドテーブルの上にあるシグネチャーライトが各シートポジションに連動して点灯し、光量も調節できる(サイドテーブル側面にある液晶コントローラーとリモコンでもシート位置の設定と照明の調整が可能)。

 個人用モニターに化粧室の空き状況が表示されることもユニークだ。ビジネスクラス専用の化粧室は全部で3室あるが、それぞれの使用状況がリアルタイムでわかるため、トイレ待ちのストレスとも無縁なのだ。

 ほかにも、充実した収納スペース、ワイヤレス充電ポートを含む各種の充電機能、無料で使い放題の高速機内Wi-Fiなどなど、「アリア・スイート」には最先端のビジネスクラスならではの機能が揃う。

 成田から香港までは4時間半ほどだが、個室は居心地がよく、あっという間に香港に到着した。もっと乗っていたいというのが正直な感想だった。「アリア・スイート」の本領は、2025年に順次導入される欧米線や豪州線などの長距離路線において遺憾なく発揮されるに違いない。同社は合計30機の777-300ERを新仕様に改修する予定だ。

ドアを付けてプライバシー性を大きく向上させた「アリア・スイート」は全45席。ラグジュアリーなデザインの中にも自宅に帰ったような温かみを感じさせるくつろぎの空間だ。
ミールサービスの最後に登場するワゴンには、チーズ盛り合わせやフレッシュフルーツ、ハーゲンダッツのアイスなどが。香港への短距離路線でもワゴンサービスが楽しめるのは、キャセイパシフィック航空のビジネスクラスならでは。

同じく一新、48席に増加したプレミアム・エコノミーにも注目!

777-300ER新仕様機ではプレミアム・エコノミーとエコノミークラスのプロダクトも刷新された。こちらはプレミアム・エコノミーで、座席配列は従来と同じ2-4-2の横8席だが、座席数は約1.5倍の48席に増加。シートをリクライニングしてレッグレストを上げ、革製のパッド付きのフットレストに足を乗せると、頭からつま先までゆっくり伸ばせる。
Photo:Murata Takayuki
革製のヘッドレストはウイング付き。仮眠のときもこの小さな翼が頭部をサポートしてくれ、プライバシー性も向上する。パーソナル読書灯も内蔵。
Photo:Murata Takayuki
2024年10月にデビューしたばかりの、キャセイパシフィック航空待望の「アリア・スイート」。ファーストクラスにも肉薄する快適性が自慢のこの新ビジネスクラスに、さっそく搭乗する機会を得た。なんとも贅沢な空間に身を委ねてあっという間に過ぎ去った成田から香港へ、4時間半のインプレッションをお届けする。