特集/本誌より

JAL羽田=シドニー線で、ボーイング777-300ERを2クラス乗り比べ! ファーストクラス編

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ゆったりと使えるファーストクラスのお手洗い

 食事も景色も堪能したところで、筆者も少しばかり仮眠をとることに。ファーストクラスのベッドメイキングは客室乗務員がすべてやってくれるので、一旦席を外してラバトリーで寝支度をする。ここで役立つのが、アメニティ類だ。

アメニティキットのポーチは、障がいを持つアーティストと契約し、その作品を世に広める「HERALBONY」とのコラボ。今回は高田 裕氏の作品「迷路」がデザインされていた。中には耳栓にアイマスク、充電器といったフライトを快適にする品に、歯ブラシとマウスウォッシュ、保湿マスク、ヘアコーム、ポケットティッシュ、「PAYOT」のリップとハンドクリームといった化粧品が入っている。またアメニティとは別に、男性には「SHISEIDO MEN」のスキンケアセット(写真左)、女性の場合は「クレ・ド・ポー ボーテ」のコスメキットが手渡される。

 そして向かった先のラバトリー。他のクラスと同様にウォシュレットが装備されているのはもちろん、冒頭で紹介したリラクシングウェアなどに着替える際に便利な着替え用の台が設置されている。何よりも8席に対してお手洗いは2つもあるため、次の人を待たせまいと焦ることもなく、ゆっくり身支度ができるのが嬉しい。

台に加え、着替え中にちょっと腰掛けることができるベンチもついている。
カウンターには「クレ・ド・ポー ボーテ」の乳液とリペアオイルを常備。使い捨てのタオルはペーパーではなく布製だ。

 自席に戻ると、そこは全く異なる空間へと生まれ変わっていた。窓のシェードも閉じられ、間接照明が良い雰囲気を演出している。寝具はJALファーストクラス専用の「エアウィーヴ DUAL MODE」(マットレス)と「エアウィーヴピロー S-LINE」(枕)を採用。マットレスは裏返すことで硬め・柔らかめを切り替えられる仕様で、ベッドメイキング前に客室乗務員が希望を聞いてくれる。筆者は硬めにしていただいた。

ベッドの大きさは最大で幅約84cm、長さ約198cmあり、寝返りを打つにも十分な広さだ。

目覚めたら東京はもうすぐそこに。到着前にもう一度、食事を楽しむ

 日中のフライトなので少しの仮眠で済ませるつもりだったが、快適なエアウィーブ寝具により安眠の世界へと連れていかれ、しっかりと昼寝をしてしまった。乗客が少ない分、周りの動きがほとんどない静かなファーストクラスの空間も、深い眠りの一助となったに違いない。

 目が覚めると、到着前最後の機内サービスという時間帯。ファーストクラスは食事の提供時間も決められておらず、離着陸前後以外は好きな時に食べることができるスタイルだが、到着前に早めの夕食として、2食目をいただくことに。

アラカルトメニューは種類が豊富で、好きに組み合わせてオーダーできる。まずは“前菜”として「プロシュート、マッシュルーム、蕎麦の実のサラダ クリーミーディルドレッシング」。
1食目は洋食を選んだので、こちらは軽めの和食をチョイス。台の物は「鶏肉の白菜巻き 椎茸、人参、スナップピース」、そこに香の物、さらにご飯と味噌汁がつく。ここでいただいたドリンクはファーストクラス限定、“幻の焼酎”「森伊蔵」だ。

優雅なフライトも、まもなく終盤へ

 もうこれ以上は食べられない。久しぶりに味わうこの感覚に幸せを感じながら、残りわずかとなったフライトを楽しむ。機体は徐々に日本へと近づいてゆき、東京都青ヶ島を過ぎたあたりで降下を開始。千葉県鴨川市あたりから房総半島上空を縦断し、その西端に沿うように東京湾から進入。そして、羽田空港RWY34Lにタッチダウンした。

ちょうど夕暮れ時の羽田空港に着陸。管制塔の背後には美しい空が広がっていた。

 このまま到着かと思ったが、どうやら我々のスポットは遅延している他社機が使用中のようだ。必然的にJL52便も遅延を強いられるが、ファーストクラスをより長く楽しめるならば、むしろ歓迎すべきこと。羽田空港はちょうどラッシュの時間だが、窓の外で忙しく行き交う離着陸機とは対照的に、ファーストクラスはゆったりと時が進む。

まだまだ世界各地を忙しく飛び回っているJALの777-300ER。誘導路で待機中、ロンドンから帰ってきた1号機、JA731Jが横を通過した。

 日の入り前後の美しい景色をしばし楽しんでいると、最終的に別のスポットへと変更になり、まもなく到着する旨がアナウンスされた。これは、ファーストクラス、そして777-300ERとのお別れの時間が来たという知らせでもある。

 往路エコノミークラス、復路ファーストクラスに搭乗した今回のシドニーへのフライト。最新のA350-1000が活躍の場を広げるなか、両クラスともに777-300ERなりの良さがあると感じた。やはり、これまで “フラッグシップ”としてJALの顔を担ってきただけある。特に今回の「JAL SUITE」は、777-300ERだけが叶えてくれる体験。引退までに、再び乗る機会は訪れるだろうか。

最終的にはオープンスポットに到着したJL52便。このサイズの機体からタラップで降りるというのもまたレアな体験で、最後に777-300ERを外から存分に眺めることができた。
いよいよ退役が始まったJALのボーイング777-300ERで、シドニーを往復する旅。往路はエコノミークラスを利用したが、復路はいよいよ最上位のファーストクラスへの搭乗となる。777-300ERだけに搭載される「JAL SUITE」に腰掛け、JALが誇る最高峰のサービスを体感した。