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SQ671便・中部発シンガポール行き〜ボーイング787-10 part1

“最新鋭の翼とやさしいおもてなし”をポリシーとするシンガポール航空の名古屋(中部)〜シンガポール線は2019 年10月、就航30周年を迎えた。
この記念すべき年に名古屋線へ投入されているのは、同社がアジア域内用として導入を進めるボーイング787-10。
いつ乗っても期待を裏切らない安定のホスピタリティは、ますます磨きがかかっている。
※この記事は 『航空旅行vol.31』(2019年10月発売)から抜粋・再編集したものです。

文:本城善也 Text by Yoshiya Honjo  写真:大橋マサヒロ Photo by Masahiro Ohashi
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SQキャビンクルー

平成とともに始まった名古屋線

 元号が昭和から平成に変わった30年前の1989年10月30日、名古屋空港(現在の県営名古屋空港)の全長2740mの滑走路に、1機のボーイング747-200が舞い降りた。福岡空港経由でやってきた紺色の尾翼に鳥をモチーフにしたシンボルロゴを黄色で描くこのジャンボジェット機こそ、シンガポール航空の名古屋線初便である。当初は週3便だった運航も、1996年6月からはデイリーになり、時代が令和になったいま、中部国際空港から最新鋭のボーイング787-10がシンガポールとの間を毎日直行で結んでいる(編集部注:2024年2月時点では週5便の運航)。シンガポール航空は就航以来、名古屋をはじめとした中部地区にしっかりと根ざし、着実に成長を続けて2019年10月30日に30周年を迎えたのだ。
 そして今号のビジネスクラス特集である。もっともサービス競争が熾烈なクラスに注目するうえで、世界から長年にわたって高い評価を獲得し続けているシンガポール航空を無視することはできないだろう。シンガポール航空のプロダクトやサービスの一体どこがすごいのか?

787の贅沢な使い方

 さて、787‐10である。787は運航効率と機内快適性を高めた最新鋭の航空機であり、日本では国内線から長距離国際線まで幅広く活躍している。とくに国際線では、昨今新しく開設される路線は787の性能をフルに活用したものが多く、遠くはメキシコやアメリカ東海岸まで直行できる足の長さも自慢だ。要は長距離国際線でも十分に対応できる機種なのである。シンガポール航空は、胴体長が短い順から787-8、787-9、787-10と3つある787のモデルのうち、最長の787‐10を運航している。787‐10の全長は68mで、大型機のボーイング777-200よりも4.3m長い。
 また、先にも書いたとおり、787は航続距離の長さも特徴のひとつである。ボーイング社が公表している787‐10の航続距離は1万1190㎞で、これは東京を起点にするとニューヨーク(1万840㎞)に届き、ロンドン(9556㎞)であれば余裕で到達できる性能だ。しかしシンガポール航空はアジア域内路線用の機材として導入した。787は、胴体が強固で錆びない複合材料であるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)で製造されることからキャビン内を加湿することができ、機内の気圧も高めにすることができる。よってロングフライトになればなるほど疲れにくく、恩恵を享受できる機種なのだが、それをアジア専用としているのは贅沢な使い方といえないだろうか。
 さらに、787‐10に合わせて導入された新シートも快適性を高めている。ビジネスクラスは全長76インチ(約193㎝)のベッドにもなるフルフラットシートで、エアラインによっては長距離路線で使用しているハイスペックなものだ。ただ、ベッドになるだけでなく、フライト中の揺れで不意な物の飛び出しを防げるトビラ付きの収納や、ちょっとした化粧直しなどにも使える引き出し式のバニティミラー、最先端のIFE(機内エンターテインメントシステム)、輝度を調整できるスタイリッシュな読書灯、頭部を覆うパーティションの内側に採用された肌触りが良く、遮音性の高いアルカンターラ製のファブリックなど、痒い所に手が届くシンガポール航空ならではの装備も随所に見ることができる。
 ちなみにエコノミークラスのシートも、キャビンのリニューアルを進めているエアバスA380(編集部注:A380のリニューアルは完了済み)とほぼ同じドイツ・レカロ社製の最新モデルで、快適性を重視し、細部まで作りこまれているのはビジネスクラスと同様だ。

“最新鋭の翼とやさしいおもてなし”をポリシーとするシンガポール航空の名古屋(中部)〜シンガポール線は2019 年10月、就航30周年を迎えた。 この記念すべき年に名古屋線へ投入されているのは、同社がアジア域内用として導入を進めるボーイング787-10。 いつ乗っても期待を裏切らない安定のホスピタリティは、ますます磨きがかかっている。 ※この記事は 『航空旅行vol.31』(2019年10月発売)から抜粋・再編集したものです。

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