特集/本誌より

客室乗務員がパーソナリティ。ZIPAIRが社内向けラジオ番組を制作する理由

ZIPAIR社内で配信されている、客室乗務員2名がパーソナリティを務める社内向けラジオ「ZIP ON AIR」。動画やテキストではなく“音声”を通じて発信する、その内容とパーソナリティの2名を取材した。

文:多和田新也(編集部) 写真:多和田新也(編集部)
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ZIPAIRが社内向けに配信するラジオ番組「ZIP ON AIR」の収録現場を取材。

 ZIPAIRには、社員自らが制作し配信するラジオ番組が存在する。客室乗務と地上旅客業務を兼務するZ_ONEスタッフの2名がパーソナリティを務める社内向けラジオ「ZIP ON AIR」だ。Z_ONEの業務のほかにオフィスでの広報業務を兼任しているスタッフが立ち上げたもので、現在その職にある中村有佐氏と松田未来氏がこれを引き継いでいる。

 そのきっかけは、社内のコミュニケーション活性化や、会社で今起きていることをリアルタイムで知れるツールを作りたいという動機だったという。2025年にスタートし、ほぼ月に2回のペースで制作。これまでに22回が配信された。

 「ZIP ON AIR」の内容は、まずオープニングとしてラジオ番組自体の説明を行ない、続いてZIPAIR社内のホットなニューストピックを紹介。そして、毎回社内から“ゲスト”を招き入れ、そのゲストの業務内容やこれまでの職歴などを深掘りしていく。さらに、ゲストのプライベートな趣味に迫るトークや、「うまいもんレーダー」と題してゲストおすすめの飲食店やグルメを訊くコーナーへと続く、仕事の裏側からパーソナルな魅力まで、ゲストの人柄を多角的に引き出す構成となっている。

 番組の時間は厳密には定めておらず、通勤や移動中に聴きやすい30分から40分程度を目安としているが、トークが白熱し、長いときには50分程度の特番サイズになったこともあるという。

第23回の収録を取材。収録はオフィス内の会議室で行なわれる。

 取材したのは、通算第23回目となる番組の収録。この回のゲストは、路線事業部兼総務部の嶋田海斗氏だった。嶋田氏は、路線事業部、総務部それぞれでの多岐にわたる担当業務から、趣味である釣りの魅力のほか、路線面では担当路線の目標のロードファクターや売り上げを達成することや自分で何かイベントを企画すること。広報の面では、このラジオの継続と社員の交流をより促進し社内の活性化につなげたいという目標、そして、おすすめのグルメ紹介コーナーでは韓国のコンビニで購入できる「延世牛乳クリームパン」を語り、収録はおよそ30分ほどで終了した。

 追って、これを編集。さらに気合いの入ったサムネイルも作成されたうえで、社内で公開されることになる。

この日のゲストは路線事業部兼総務部の嶋田海斗氏。おおまかな質問事項は決まっているが基本的にはすべてアドリブで進行される。
収録時にパーソナリティとゲストで写真を撮影。生成AIを利用したユニークなサムネイルとともに番組を配信する。

パーソナリティ両名に訊く、ラジオ番組で伝えたいこと

Q:ゲストの選定方法や、過去に出演されたゲストについて教えてください。

中村氏:ゲストは私たちが自由に選定しています。過去の回と内容や部署が重ならないように配慮しています。まわりのクルーや地上スタッフに「どんな人の話が聴きたい?」と意見を聞きながら、時間をかけてゲストを決定しています。

松田氏:私たちの初回には深田社長がスペシャルゲストとして出演されました。そのほか、社内のお悩み相談を担う「ZIPピアサポート」のメンバー、チーフパイロット、直近ではスターリンク関連の担当者などを招いています。

Q:ゲストに対する事前取材や台本といった準備はあるのでしょうか?

中村氏:事前の取材や詳しい仕込みはありません。この場でぶっつけ本番で撮影・収録しています。ときには初対面のゲストの方もいます。

松田氏:事前に渡すのは質問項目のみで、自己紹介、仕事内容、趣味、おすすめの食べ物という大きな項目から、その場のやり取りで深掘りしています。

パーソナリティを務める中村有佐氏。

Q:質問や深掘りをする際に、意識しているポイントはありますか?

中村氏:私たちが話していて気になることは、リスナー(聴いている社員)も気になる点だと思います。そういった視点から質問し、ゲストから引き出した内容を皆に知ってもらえるように意識しています。

Q:番組の長さや、想定している聴取シチュエーションについて教えてください。

中村氏:通勤時間で手軽に聴ける“ながら聴き”を想定しているため、1回あたり30分から40分弱を目安にしています。ただ、話が盛り上がるとオーバーすることもあります。深田社長の回は盛り上がりすぎて50分ほどになりました。

Q:動画やテキストではなく、あえて音声(ラジオ)という形式を採用している理由やメリットは何ですか?

松田氏:動画と違って画面を凝視する必要がなく、作業をしながら聴けるのがメリットだと思います。

中村氏:社員からは「声や話し方からその人の人柄が伝わる」と言われたことがあります。顔が見えないからこそ、どのような表情で話しているのか想像しやすい面もあります。また、ゲストの方も最初は緊張されていますが、ラジオのゆるい雰囲気によって徐々に素が出て、普通に会話しているような自然なやり取りになれるよさがあります。

パーソナリティを務める松田未来氏。

Q:番組を通して、ゲストのどのような部分を引き出したいと考えていますか?

中村氏:客室乗務員やパイロット、グランドスタッフといった表に出る職種だけでなく、裏側でフライトを支えているオフィス業務の方々の仕事内容や努力を引き出したいと考えています。そのため、間接部門の方々をゲストにお呼びすることが多いです。

松田氏:社員が聴いたときに「自分の会社はこんなにすごいんだ」と愛着が湧くようなトピックを引き出すことを心がけています。

Q:番組制作の裏側や工夫されている点があれば教えてください。

中村氏:編集作業にも慣れてきて、現在は2時間ほどで仕上げられるようになりました。また、生成AIを活用してサムネイル画像を作成しており、オフィスの大きなモニターに掲示してQRコードからいつでも聴けるように工夫しています。

Q:最後に、このラジオ番組を通じて一番伝えたいメッセージは何ですか?

松田氏:ZIPAIRのタイムリーなトピックをラジオで聴いてもらい、会社の取り組みや注力していることをキャッチして会社への愛着を深めてもらうことです。もう一つ、私はオフィス勤務を経験することで、客室視点と地上視点の双方から意見を言えるようになりました。兼務という新しい働き方を発信することで、社員が新しいことに挑戦するきっかけや後押しになればと思っています。

中村氏:一便のフライトを飛ばすための“裏側の努力や背景”を全社で共有したいという思いです。表に出る職種だけでなく、間接部門など見えないところで日々フライトを支えてくれている方々の人柄や生の声を届けることで、お互いの仕事をより深く知るきっかけにしたいと考えています。このラジオを通じて、部署の垣根を越えて相互に理解を深め、会社全体が一つのチームとしてフライトを作り上げているという意識がさらに広がっていってほしいと願っています。

パーソナリティを務める中村有佐氏(左)と松田未来氏(右)。現在も客室乗務&地上旅客業務のかたわら、広報業務も兼任している。

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