連載
高温高圧のブリードエアを機内に調整して送る「PACK」とは~ 連載【月刊エアライン副読本】

【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。
多くの旅客機は、エンジンが圧縮した空気を一部抽出して機内に送っている。これをブリードエアというが、空気は圧縮すると熱くなるという性質(断熱圧縮)があるため、ブリードエアは高圧であるだけでなく高温(約200度C)にもなっている。もちろんこのままキャビンに送ることはできないため、適切な圧力と温度に調節しなくてはならない。
それを行なうのがPACK(パック。Pressurization and Air Conditioning Kit)という装置だ。
PACKは、ほとんどの旅客機では主翼と胴体をつなぐフェアリングの中に収められている。熱い空気を冷やすための熱交換機用の空気取入口と、その空気を排出する穴が開いているので、下から見上げればだいたいの場所は見当がつく。エンジンからのブリードエアを胴体に送る中継点としては、合理的な場所といえるだろう。ただしリアエンジン機では、胴体後方に装備しているものが多い。
ちなみに圧縮されて熱くなった空気は、元の圧力に戻すだけで断熱膨張により元の温度に戻る。高高度で吸い込んだ外気は0.2~0.3気圧しかないため元の圧力に戻すわけではないが、気温はマイナス50度C近いから熱交換機を通さなくても十分に冷たくなりそうだ。
しかしエアコンは気温が高い地上でも使用するし、冷たすぎてもPACKには熱いブリードエアも通っているのだから、それらをうまく混ぜてやればちょうどいい温度にできる。
また旅客機には、ブリードエアではなく独立したコンプレッサーを使ってキャビンの与圧や空調を行なうものもある。
有名なのはボーイング787で、ブリードエアを抽出することでエンジンの効率(燃費)が悪化することを嫌ってこのようなシステムとした。だから787のPACK付近には、熱交換機用のほかに機内に送るための空気取入口も設けられている。
もうひとつはJALでも使われていたダグラスDC-8で、機首の空気取入口から熱交換機用と機内用の空気を導入している。JALはDC-8の自社初号機(機首部分)を羽田空港の格納庫に保管しているので、工場見学のときに見る機会があるかもしれない。
空気取入口の中は3つに分岐しており、機内に送られる空気はブリードエアで駆動されるコンプレッサーで圧縮され、熱交換機で冷却される。
さらにDC-8で特徴的なのは、家庭用エアコンなどと似た仕組みのフレオン冷却装置まで装備しているということだ。
ただしこのシステムは、高速回転するコンプレッサーによりコクピットの騒音がひどく、エンジンの出力に応じてコンプレッサーの回転数が変動するなどの欠点があった。
そのためダグラスもDC-8以外の旅客機では使っていないし、エンジンをCFM56に換装したDC-8-70型ではエンジンからのブリードエアを機内に送るように変更した。このようなモデルは、機首の空気取入口の一部が滑らかに塞がれている。
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