特集/本誌より

デルタ航空100周年の思い出:あの日、最後の747-400に乗ったこと。

2025年、創立100周年を迎えたデルタ航空では搭乗時の思い出を100文字で表現する 「100文字エッセイ」 キャンペーンを実施。応募期間は9月15日(月)締切となっている。
さて、デルタ航空の思い出を語るときに多くの航空ファンが思い浮かべるのは、2017年に日本路線から去った747-400「デルタジャンボ」のことではないだろうか。航空史に残る成田発の最終便を、この機会に振り返ろう。

※デルタ航空、創立100周年記念「100文字エッセイ」募集キャンペーンの詳細はコチラから!

文:坂部秀治 写真:坂部秀治
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2017年10月30日、成田発デトロイト行きDL276便にて

 デルタ航空で活躍していたボーイング747-400、通称「デルタジャンボ」が2017年10月30日に日本路線からの撤退を迎えた。

 記念すべきラストフライトを飾ったのはデトロイト=東京・成田間のDL275/276便、成田出発時には関係者による盛大なセレモニーも行なわれた。当時を振り返って、ラストフライトの日の様子をお伝えしたいと思う。

ノースウエスト航空との合併で、復活した「デルタジャンボ」のあゆみ

 「デルタジャンボ」の歴史の始まりは半世紀以上前にさかのぼり、在来型と呼ばれる747-100が1970年10月25日にアトランタ=ダラス・フォートワース=ロサンゼルス間でデビューした。

 当時はダグラスDC-8やボーイング727などナローボディ機が主流で、ジャンボジェットのゆとりある空間は米国の国内旅行を変革した。「Private Penthouse」と呼ばれる専用ラウンジも設けられており、まさしくフラッグシップとして活躍していたのである。しかしながら、ロッキードL-1011トライスターの導入によりその座を追われ、1977年までに全機退役となっている。

 転機が訪れるのは2008年4月に発表された、旧ノースウエスト航空との合併である(合併完了は2010年1月末)。デルタ航空は存続会社として、旧ノースウエスト航空で運用されていた機材を引き継いだ。これによりデルタ航空におけるジャンボジェットの歴史が復活する事となり、退役までの約9年間、国内外問わず多くのファンから親しまれたのである。

サンセットとともに成田へのラストランディングを迎えたボーイング747-400(N669US)。展望デッキやランウェイエンドは別れを惜しむ航空ファンで賑わいをみせた。成田空港では当たり前だったこの光景も、この日をもって見納めに。
成田発、最後のデルタジャンボの出発はDL276便、デトロイト行き。

振り返る、最後のフライトの光景

 前置きが長くなってしまったが、日本線におけるデルタジャンボの定期便ラストフライトを振り返ろう。

 アメリカ発最終便となるDL275便、成田行き(デトロイト発)は、定刻よりも約30分遅れて第1ターミナル26番スポットに到着した。有終の美を飾ったのは1990年8月導入のN669US、その着陸時には展望デッキやランウェイエンドなどに多くのギャラリーが集い盛り上がった。この日はスポットインと日没が同時間帯であり、綺麗なサンセットとのコラボレーションもかなっている。

 折り返しDL276便、デトロイト行きにアサインされる「デルタジャンボ」の、日本線におけるラストフライトを記念して行なわれたセレモニーでは、ラッセル・ブリス機長およびテリー・プレスリー副操縦士がスピーチ。のちに行なわれた花束贈呈ではデニス・ランドリー機長および客室乗務員のペギー・スレーターさんも参加した。このセレモニーは一般客も参加することが可能であり、多くの航空ファンや地上職員が感動的なシーンを見届けた。

 こうして関係者が一丸となって盛り上げた引退記念セレモニーの終了後は、慌ただしく運航準備へと入った。搭乗に際し記念品(ポストカード、イヤホン)の配布が行なわれ、希望者にはデルタ航空オリジナルのキャンディもプレゼントされた。しばしば、日系キャリアと比べて淡白なサービスと言われる米系キャリアだが、その印象とは裏腹に「おもてなし」を感じることが出来た。

DL276便、デトロイト行きのキャプテンを務めるラッセル・ブリス機長。スピーチでは「航空史を考証するうえで、ジャンボの国際線における偉業は、(米国内線における)DC-3導入に値すべきもの」と述べている。また翌日より導入されるエアバスA350-900の紹介も行ない、ブリス氏自身も移行訓練に入る旨が伝えられた。
ラッセル・ブリス機長、デニス・ランドリー機長、そして客室乗務員のペギー・スレーターさんが参加した花束贈呈。旧ノースウエスト航空から引き継がれたジャンボジェットもこの日で見納め。折り返し時間の慌ただしい中、このようなセレモニーが開かれた事に改めて感謝したい。
DL276便、デトロイト行きの出発ゲートである26番搭乗口付近に展示されたフォトパネル。ラストフライトに関連して行なわれた「THANK YOU 747-400」キャンペーンでは、航空写真家チャーリィ古庄氏による作品が採用されている。
搭乗記念品として配布されたポストカードとステッカー。いずれも日本路線での運航終了に際して制作された、航空ファン垂涎のオリジナルグッズだ。

満席の機内で感じた、ジャンボならではのゆとり

 この日のDL276便はほぼ満席での運航となっており、大型機特有のゆとりが身にしみる。

 出発に先立ち、翌日より投入されるエアバスA350-900の紹介、ジャンボジェットの歴史や日本路線での運航最終日である旨が客室乗務員によってアナウンスされた。外を覗くと、大勢のスタッフやファンたちが見送る光景が。長年にわたり愛されたこの機体も、ついに18時50分に成田空港から最後のテイクオフ。

 機内では表立ったイベントは行なわれていないが、乗務員・乗客とも「ジャンボでのフライト」を楽しんでいるように感じた。食事は離陸後に提供されるディナーサービス、深夜帯に提供されるミッドフライト・スナックサービス、到着前に提供されるプリアライバルミールサービスの3回を楽しめる。両クラスで複数メニューからのチョイスが可能であり、本格的な和食もラインナップに加わる。

 同機はデルタ航空移籍を機にキャビンリニューアルの改修を受けており、ビジネスクラスはフルフラット対応のデルタ・ワンにアップグレード、エコノミークラスも個人用モニターやUSBポートを装備、ビジネスクラスは110V電源を備えるシートに変更された。

機内後方よりエコノミークラスのキャビンを写す。同便はほぼ満席での運航となったが、窮屈さを感じさせないゆとりがジャンボの特徴だ。2012年にキャビンリニューアルも行なわれており、長距離フライトでも苦にならない。
出発時に上映されるセーフティビデオ。素材自体は他機材と変わりないが「B747-400」の文字がどこか誇らしい。メインデッキ片側だけでも5つの非常口、さすがジャンボジェットと思わせる表示だ。
夜明けとともに柔らかな光が差し込んでくる。堂々とした4発エンジン、デルタ航空機のアイデンティティとも呼べる青いウイングレットとのコラボレーションももう見納め。

いまや貴重になってしまった、747だけのフライトの雰囲気

 成田での出発が遅れたため、約30分遅れでデトロイト国際空港に到着した。フライトタイムはおよそ10時間50分となっている。到着地でのセレモニーや特別なアナウンス等は行なわれなかったものの、ジャンボでのフライトをともにした航空ファンたちが、思い思いに撮影を行なっていた。

 日本線ラストフライトからおよそ8年、新型コロナウイルスやそれに伴う航空需要の変化、新型機の登場によりジャンボジェットはさらに数を減らしている。いまでは貴重な存在となってしまった747-400型機の雰囲気を、少しでも感じ取っていただけたら幸いだ。

約30分遅れでデトロイト国際空港・A26番スポットに到着したDL276便。遮光用フィルムにより撮影には不向きだが、トレーディングカードを並べてみた。ここでは当たり前だったシーンも、すでに過去帳入りとなっている。
降機時に撮影させていただいたAコンパートメント。ビジネスクラスとして運用されており、ジャンボジェット特有の空間だった。
2025年、創立100周年を迎えたデルタ航空では搭乗時の思い出を100文字で表現する 「100文字エッセイ」 キャンペーンを実施。応募期間は9月15日(月)締切となっている。 さて、デルタ航空の思い出を語るときに多くの航空ファンが思い浮かべるのは、2017年に日本路線から去った747-400「デルタジャンボ」のことではないだろうか。航空史に残る成田発の最終便を、この機会に振り返ろう。 ※デルタ航空、創立100周年記念「100文字エッセイ」募集キャンペーンの詳細はコチラから!

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