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地域間の課題差解消など、新体制で品質向上目指す。空ハン協の今期総会
一般社団法人 空港グランドハンドリング協会は、今年度の年次総会を開催。全国から108社、190名以上が参集し、「品質の向上」、「経営基盤の強化」、「情報発信」を軸とした今期の活動方針をまとめた。

一般社団法人 空港グランドハンドリング協会(空ハン協)は5月12日、第3回年次総会を開催した。第3期目となる2025年度は、新会長に株式会社JALグランドサービス 代表取締役会長の宍倉幸雄氏が就任した。
航空需要が回復する一方で、業界の人材確保や離職抑制にといった課題は依然として継続しており、この解決に向けた取り組みは変わらず続けられる。今期の取り組みとして、宍倉氏はまず「品質の向上」について、「人材」、「規程などのソフトウェア面」、「器材などのハードウェア面」、と大きく3つに分類。
人材については、これまで外国人材の活躍に向けた制度変更など、関係当局に対してさまざまな提言を実施してきた。さらに、従業員が安心して働ける環境を作るためのカスタマーハラスメント(カスハラ)対策についても、昨年度にガイドラインが策定されているが、こちらは、乗客への理解促進や、具体的な取り組みが見えるようなフェーズに入っていくことになる。
加えて、待遇改善については賃金や労働環境に関して各種調査を進めているなか、経営者の後押しをできるような取り組みを継続したいとしている。
総会後の記者会見で、執行理事の栢沼史好氏(JAL空港本部 空港事業企画部長)は、調査の内容については統計的データとして協会内に周知しており、そうした点も含めて委託料増額につながるような取り組みをしていく意向を示した。
また、同じく執行理事の曽原倫太郎氏(ANAオペレーションサポートセンター 空港サポート室 グランドハンドリング企画部長)も、サプライチェーンを強くすることが結果としてグラハン事業者にとって顧客である航空会社の付加価値を向上させることになり、ここで生み出された航空会社のメリットを委託先であるグラハン事業者にも適正に配分していくことを目指していると説明した。
続いて、「規程のソフトウェア面」については、資格の共有化に言及。訓練や教育にかかる時間を省力化できるメリットは待遇にも還元できるもので、それが業界全体の強みにも変わっていくと考えているという。とはいえ、宍倉会長は記者会見のなかで、「安全を堅持してスタンダード統一していくのは難易度の高い作業」と話しており、各空港で共有化を進める際に、誰(どの企業)がリード役を担うかなどにも留意しながら進めたいとしている。
3点目の「器材などのハードウェア面」は、作業量軽減のために自動化を進める必要があり、国交省航空局が主催する空港DX検討会などに協会として積極的に参画して、空ハン協の会員企業が新たな技術を早く使えることに貢献していく意向だ。
このほか、宍倉氏はあいさつのなかで「情報発信」の重要性も挙げた。空ハン協が空港で実施するイベントや、学校法人との連携による職場説明会・見学会を実施するなど、次世代へ向けた情報発信を引き続き積極的に行なっていく。

2025年は空ハン協の組織の強化も図る。下記は第3期の役員体制だ。
代表理事・会長:宍倉幸雄氏(株式会社JALグランドサービス 代表取締役会長)
代表理事・副会長:服部 茂氏(ANAエアポートサービス株式会社 代表取締役会長)
代表理事・副会長:須川鐵朗氏(株式会社エスエーエス 代表取締役社長)
代表理事・副会長:青戸一登氏(日本空港サービス株式会社 代表取締役)
理事:大貫哲也氏(CKTS株式会社 代表取締役社長)
理事:松村英幹氏(高松商運株式会社 代表取締役社長)
理事:木津勇治氏(西鉄エアサービス株式会社 代表取締役社長)
理事:福山智朗氏(北海道空港株式会社 常務取締役)
執行理事:三浦 佐紀子氏(西鉄エアサービス株式会社 取締役)
執行理事:横山律幹氏(鴻池エアーホールディング株式会社 取締役)
執行理事:曽原倫太郎氏(全日本空輸株式会社 オペレーションサポートセンター 空港サポート室 グランドハンドリング 企画部長)
執行理事:栢沼史好氏(日本航空株式会社 空港本部 空港事業企画部長)
監事:岡本榮一氏(国際空港上屋株式会社 代表取締役会長)
監事:馬上博明氏(日本通運株式会社 フォワーディングビジネスユニット 国内航空貨物統括部 総代理統括センター長)
新たに、中部(東海)地方を代表する物流企業・鈴与グループのエスエーエス 須川鐵朗 代表取締役社長が副会長に就任したほか、「理事」職が新設されて各地域を代表するグラハンドハンドリング企業の役職者が就任した。
会員企業が当初の50社から122社に増加するなか、東京に置かれる事務局と、地方の会員企業との間の温度差解消を図り、地域の課題を解決していくような体制が求められている。そのため昨年度から「地域別分科会」を開催しているが、この機能をより強化するために、理事の数を増やし、5地域それぞれで分科会を開催する予定。
宍倉氏によると「住まいや、出退勤時の交通手段など、実際の職場以外でも地域による差があります。東京をスタンダードとして考えてしまうと温度差が生まれてしまうので、(東京の事務局にとっても)自分のこととして捉えて解決を図っていきたい」と、その目的を話す。また「旅客」「ランプ」「貨物」の3領域それぞれの「部門別幹事会」も設け、それぞれの視点から職場環境改善につながるような活動をしていく計画だ。

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