旅慣れた人にこそおすすめしたいZIPAIR、来年はヒューストンへ。
10月10日、ZIPAIRが新路線の開設を発表しました。
来年3月4日から本拠地の成田空港から週4便で飛び始める新たなデスティネーションは、アメリカのヒューストンです。
片道約12時間のロングフライトはどんな感じになるのでしょうか?
そんなヒントを探るべく、今回は『航空旅行vol.41』で掲載したZIPAIRの記事を再編集してお届けしましょう。
渡航にあたってはまだPCR検査が必要で、コロナ禍の影響が残る2022年2月の取材ですが、フライトの様子は感じ取っていただけるのではないかと思います。
※この記事は『航空旅行vol.41』(2022年4月発売)から抜粋・再編集したものです。
バンコク行き、ZG51便に搭乗
ZIPAIRの成田発バンコク行き、ZG51便は16時50分の出発だ(2024年10月現在は17時発です)。すでに日は傾き、北ウイングの大きな窓からは西日が差し込んでいる。バンコク行きの搭乗ゲートは23番で、隣の22番にもZIPAIRのボーイング787-8が駐機している。こちらはホノルル行きのようだ。ちなみに小誌ではホノルル線も取材していて、こちらは『vol.39』号で掲載しているので、今回の記事と読み比べてみても面白いかもしれない。
ドアクローズ後、ZG51便の機内では、クルーによるセーフティデモが行われる。昨今のセーフティデモは、特に国際線では個人用モニターを装備している機材が多いのでビデオで済ませるところが多い。しかしZIPAIRの機材は、機内Wi-Fiは全乗客が無料で使えるものの、個人用モニターは装備されていないので、クルーが実演しながらシートベルトの正しい付け方や非常時に出てくる酸素マスクの装着の仕方などを説明する。少し前の時代に戻ったようで懐かしくもあるが、個人的にはビデオで流されるセーフティデモンストレーションはあまり記憶に残っていないので、目の前でその使い方や必要性をアピールするほうがライブ感もあり、視覚と記憶に残る気がする。やはりバーチャルよりリアル、生の体験に勝るものがないのは、旅にも通じるのではないだろうか。
定刻の16時50分よりも少し早い16時45分、気づけば機体はプッシュバックを始めていた。窓の外では整備士やグランドハンドリングスタッフが手を振って見送りしてくれている。
誰にも邪魔されず、自分のペースで過ごせるのはメリット
夕暮れの成田を飛び立つと、その後、タイ入国用の用紙が配られ、19時20分には消灯した。搭乗しているのはフルフラットシートの「ZIPフルフラット」なのでとにかく身体を休めたいと思い、一通り取材した後は、機内食などのサービスはすべてオーダーせず、ひたすら眠ることにした。よって目覚めた時には眼下にバンコクの夜景が見えていて、現地時刻21時35分にスワンナプーム国際空港に到着した。
本来は意図したものではなかっただろうが、必要なサービスだけを購入するZIPAIRのシステムは、乗客とクルーが適度な距離を保たなければならないコロナ禍では有効だ。個人的にはコロナ禍に限らず、機内での過ごし方は人それぞれなので、空の旅はこれでいいのだとも思う。私にとって飛行機の中は旅の途中であり、点ではなく線。目的地に着くまでに体調を整え、資料を読み込んだり、読書をしたりしてとにかくリラックスして過ごしたい。もちろん、積極的にフライトを楽しみたいと思うときもあるが、休息を目的とするならば大型の個人用モニターもフルコースのディナーも必要ない。美味しい食事は到着地でレストランを予約しておけばいい。
かといってロングフライトでは、のどが渇いてくることもあるだろう。そんな時は機内Wi-Fiを通じてつながるポータルサイトの機内販売メニューから、軽食やカップラーメンなどを必要に応じて購入できる。支払いはクレジットカード(Visa、Mastercard、JCB)で、コーヒー1杯からオンラインショッピングをするように注文できる。飲食だけでなく、デザイン性が高いZIPAIRオリジナルのナイロン製のトートバッグにネックピローやブランケット、アイマスクが入っている「アメニティセット」も、機内だけでなく、旅先でも重宝するアイテムだ。
LCCというと、もしかすると「安かろう、悪かろう」といったイメージをお持ちになる方がいらっしゃるかもしれない。しかしZIPAIRに関しては、心のこもった日本式のおもてなしの気持ちが嬉しい。新しく開設される成田〜ヒューストン線は、片道約12時間のロングフライトになるが、ZIPAIRなら快適に移動できそうだ。
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